眠りにつくまで

今日がダメなら明日。

明日がダメならあさって。

 

いつか眠りにつけるはず。

 

別に今日じゃなくたっていいじゃないか。

明日じゃなくたって。

なんなら、週末に寝だめでも。

 

 

 

 

 

23時。

そろそろ寝ないと、明日仕事にならない。

 

ベッドに入る。

 

彼女が入った寝床は、近所の有名な寝具専門店のマットレスに、冷感素材のベッドパット。

枕はセミオーダーのものだ。

 

 

彼女は、こと睡眠に関してはひどく神経質で、頻繁にカバーを洗濯し、寝たいと思う時間の3時間前には入浴を済ませた。

 

室温は26度に保たれている。

 

しかし、なぜだか彼女はベッドに入ると緊張するのだった。

 

 

早く寝ないと。

早く。

早く。

早く。

 

 

ベッドの中で身を強張らせ、早くその時が来ることを、目を強く閉じて待つ。

 

消灯まではちっとも気にならない時計の針の音が耳に障る。

ブルーレイレコーダの機械音が。

エアコンの風の音が。

 

部屋に設置したあらゆるものの音

二重窓の向こうの自然界の音も

彼女の耳には、もはや騒音にしか聞こえない。

 

彼は言う。

「寝るの諦めたら?」

 

彼女は思う。

「他人ごとだと思って」

 

 

右向きになり5分。

左向きになり10分。

 

重なる膝小僧の横っ面が、彼女が骨ばった体だと訴える。

 

 

23時半。

足元に丸めておいた羽布団を足の間に挟み、赤みを帯びた膝小僧を助けてやる。

 

 

24時。

彼女は彼の言葉を思い出す。

 

枕元に置いてあるリモコンでテレビをつけ、テレビに目を向ける。

しかし、せめてもの抵抗とブルーライトカットを意識し、テレビの画質を下げる。

 

 

つまらない画面の中の出来事に退屈し、目を閉じてみた。

テレビと反対の方に体を向ける。

 

 

 

次の意識は

翌日の朝にあった。

 

 

 

なんということか。

眠りへの執着が途切れることで

眠りへの道が開かれたのだ。

 

 

彼女は思う。

明日もテレビをつけたまま寝よう。

スリープタイマーは忘れずに。